レッジョエミリア・アプローチの特徴10選

レッジョエミリア教育って何なの?と思ってGoogleで調べると、

  • 「アトリエがあって芸術専門家がいるのがレッジョ」
  • 「ペダゴジスタがいるのがレッジョ」
  • 「アートが主軸の教育法」
  • 「違いを考察するのがレッジョ」

と言った記事が多く見つかると思います。おそらくここにたどり着いた方は「え?それがレッジョなの?」という漠然として「なんか違う感」「よくわからない感」を抱えているのではないでしょうか。「子どもが主役とか芸術面を育むなら他のメソッドでもいいんじゃないかな」と思われている方もいらっしゃると思います。

この記事では読後に「レッジョってそういうことね!」と分かるように、レッジョエミリア教育の目的を見てから特徴を列挙してあります。

また下記でとりあげるのは主に「イタリアで実践されているレッジョエミリア教育」の特徴であり、アメリカで実践されているものとは様々な観点で違いがあるということも明記しておきます。(土地ごとに違いが生まれるのもレッジョアプローチの特徴です)

それでは、レッジョエミリア教育とは何であって何でないのかを紐解いていきましょう。

レッジョエミリア・アプローチの目的

「アプローチ」という呼ばれ方をするレッジョエミリア教育の目的を、語弊を恐れずに言えば「単なるヒント」に過ぎません。つまり、「こういう考え方で、こういう特徴的な活動を、こういう手法や体制でやったら世界的に評価されるに至ったから、みなさんの国や地域の教育の在り方を考える際に、ぜひ参考資料として私達の教育に対する臨み方をご参照ください」という観点でまとめられたのが、レッジョエミリアアプローチです。

もしこれが「みなさんの国や地域でも再現してください」という目的でまとめられたなら、それは「レッジョエミリア・メソッド」と呼ばれていたでしょう。ちょうど「モンテッソーリ・メソッド」と同じような存在になっていたと思います。

教育手法そのものではなく、アメリカや日本が制定している教育要項を、洗練させるためのとぎいしがレッジョエミリアアプローチであって、教育要項やカリキュラムそのものではないのです。

特徴

ここで紹介するのはレッジョエミリア保育の基本的な発想や原理と考えられているものです。具体的なメソッドではなく、哲学面が多く記載してあります。

1.模倣モデルではない

目的でも触れましたが、レッジョエミリアの学校を他の国で再現するための具体的な導入手順や教具などが定義されている模倣モデルではありません。いくら払えば全体カリキュラムが入手できるか、という情報がどこを探しても見つからないのは、こういう特徴のためであって、日本では未成熟な教育哲学だからではないのです。

事実アメリカでレッジョエミリアアプローチを導入する際には、多くの試行錯誤がなされ、アメリカ流レッジョエミリアを確立するに至ったと論文や書籍から読み取れます。和訳されている書籍でもっともイタリアとアメリカの違いが記載されているものは、レッジョ・エミリア保育実践入門ではないかと思います。

2.子どもに対する信頼感が圧倒的

平易に言えば、「子どもはいろいろできる」と信じて保育に臨みます。

子どもたちはすべて,社会的交流にたずさわったり,つながりを確立したり,彼らの学びを描築したり,環境がもたらすすべてのことを処理することを準備し,また潜在能力があり,好奇心をもち,関心を寄せていますレッジョ・エミリア保育実践入門

独特な考え方ではありませんが、特徴の一つです。

「それって保育士は子どもの活動に手を出さないってこと?それは自由というか放置じゃないの?」と思われるかもしれません。子どもから聞かれれば保育士は答えますし、保育士の側から「どうして◯◯しようと考えたか」を聞いたり、興味を引き出すための投げかけ(挑発と呼びます)を行います。ただし、遊んだり、喧嘩したり、作る過程で積極的に盛り上げたり仲裁や手助けはしません。(アメリカのレッジョではケンカの仲裁活動は積極的に行うようです)

3.チームで教育に取り組むことに徹底している

子ども、子供同士、保育者、親、自治体といった広範に及ぶチームで教育を考えることを大切にしています。親くらいいまでなら、他の幼児教育論でもよく見かけますが、自治体も(財源としてだけではなく)「教育活動に」巻き込むべきだとレッジョエミリアアプローチでは推奨されています。

3-1.子供同士の小グループを作ることを重視している

独特な特徴ではありませんが、同世代の子供同士の交流から多くの学びが得られるとして、小グループの形成を積極的に促進します。

3-2.家庭も教育に巻き込むことをいとわない

「できれば親も…」という消極論ではなく、親の存在がレッジョエミリア・アプローチにとって極めて重要な要素としてみなされています。とはいえ、すべての親が等しく高頻度・高負荷で教育に関わるべきだ、という強い主張ではなく、程度に関しては家庭の事情を考慮すべきだとしています。

ただし、教育にとって親(家庭)の存在を如何に重要視しているか、親が子どもの学びにとって重要人物であるということを啓蒙していくことは、保育施設の役割として強く推奨されます。

具体的な親の関わり方

親の関わり方としては、式典や遠足といったすでに日本でも行われているものから、子どもの活動記録の見直し会、心理的問題の討議会といった、もはや「保育士の仕事」ととらえられている深さまで踏み込んだ関わりが推奨されています。

3-3.保育者の役割はリーダーではなくパートナー

保育士は基本的に二人ペアでクラスを担当します。

主な仕事
  • 子どもたちが何に関心を持っているかを調べるために観察と質問をすること
  • 子どもたちの会話や活動を文章や写真、録音や録画として残すこと
  • 子どもの関心に適う興味を引き出すために挑発すること
  • 子どもの関心からどのような学びが得られるかを園全体で話し合って、そのためにどんな材料が必要になるかを考えて用意していくこと、生じるである別の関心事に対する準備や質問の用意(プロジェクトの立ち上げ)
  • プロジェクトを進めていく最中も、子どもの学びや気付きを記録していくこと
リーダーではなくパートナー

子どもたちは、保育士の考えたプロジェクトを自分のやり方で工夫して進めることを期待されているのではありません。なので、保育士もプロジェクトを先導(または扇動)することを期待されてはいません。

子どもたちが何に関心を持っているかを探求する研究者のような活動を期待されています。

保育士はおしなべて「子ども専門家」となるのです。

どんなときに能動的に情報を伝えるか

以下のようなケースでは、保育士から情報提供をすることを期待されています。

  • 子どもたちの関心が、子どもの知らない情報を与えなければ行き詰まってしまうとき
  • 子供の認識が、保育士の認識と同レベルに達しているとき(その情報がさらなる刺激となる)
  • 安全が確保されていないとき

3-4.協力組織の存在

これがもっとも実現困難かもしれません。レッジョエミリアの学校にいる保育士たちは、ペダゴジスタと呼ばれる教育学に明るい専門家集団に支えられています。

以下のような恩恵が受けられます。

  • 教育的なアドバイスや、保育士の考えを引き出すファシリテーション
  • 親との関係構築へのアドバイス
  • 行政機関との橋渡し

週に一度はペダゴジスタと保育士は会合します。ペダゴジスタは「教育学に明るい園内ファシリテーター」として機能するのです。ペダゴジスタは通常3−4の学校を管轄していますので、他校のケースなども常に最新の情報を入手できます。

4.空間デザインを大切にする

レッジョでは教師が2人ペアで動くと述べましたが、さらに空間を「第3の教師」として認めるほどに重視しています。

  • 意思の疎通がしやすい
  • 自己肯定感が高まるような展示スペース
  • 興味を触発する配置
  • 学びの過程で選択肢が増えるようなインテリアデザイン
レッジョエミリア市のダイアナ保育園の空間デザイン

出典: http://gabrielelottici.it/portfolio/riqualificazione-scuola-materna/

身近な空間デザイン

カフェでパソコンを使ったことはありますか?「ちょっと机が高いな」「ちょっと椅子が低いな」と感じたことはありませんか?カフェでは長時間滞在されると売上が伸びないので、勉強や仕事などを長くするには居心地がよくない環境を作っています。一方で話しやすさや居心地の良さを損なわないようにデザインされています。たとえば電源がある机の椅子だけはクッション性が低くなっていたり、空調の風が直接あたり長時間居座ると不快感が増すような場所に配置されています。

牛丼などのチェーン店のカウンター席では、ついつい早食いになってしまうような空間デザインになっていますし、病院の待合室は咳による飛沫感染を防ぐために椅子と椅子が向き合わないような配置になっています。

ビジネスや医療などの教育以外の分野でも、如何に空間デザインを真剣に考えているかが分かります。

5.時間も子どもに合わせる

年中行事やアジェンダといった予め決まったスケジュールよりも、子どもたちの感覚でプロジェクトを進行することが優先されます。つまり、だいぶのんびり・ゆったりとした進行が望ましいとされます。プロジェクトは何ヶ月も続くことが多いようです。

一方、アメリカ・レッジョではプロジェクトは数日から数週間でスパッと区切っていく方針を取っているようなのです。

6.アトリエリスタの配置

アトリエという材料と道具が豊富に揃った場所があり、そこには芸術専門家がいて子どもたちに必要なサポートをします。また、園の随所にはミニアトリエと呼ばれるちょっとした工作スペースもあります。

アトリエ活動の参考動画

7.ドキュメンテーションへの投資

レッジョエミリアの最大の特徴の1つが記録文書(ドキュメンテーション)です。

親に子どもたちの経験を伝え,彼らの関わりを維持し,保育者たちに子どもたちをよりよく理解させ,彼ら自身の仕馴を評11iiすることが含まれ,したがって,彼らの専門的な成長を促進するのです。意思の疎通や,保育者たちの中で発想の交換を容易にし,多くの子どもたちに彼らの努力が高く評価されることを気づかせ,学校の歴史をたどる記録文普は,保育者たちが学ぶ楽しさを生み出すのです。レッジョ・エミリア保育実践入門

保育士の負担が大きいのでは?

最初このドキュメンテーションについて知ったときは「いくら残業することになるのか…」と思いました。そのくらいドキュメンテーションは大変な作業です。

しかし平均的な記録整理時間は1日1時間程度のようです。果たしてどうすればそんな短時間でドキュメンテーションを残せるのかは調査してご報告できればと思います。

保育者や職員は週36時間働き,そのうち31時間は子どもたちとのふれ合い,5時間は計画の立案,親との会合,記録つけの仕事,専門的な仕事への参加,地域社会の運営の仕事,あるいは手紙のやりとり,記録の保管など,幼児学校の事柄に従事するために費やされます。レッジョ・エミリア保育実践入門

8.エマージェント・カリキュラム

瞬間瞬間でカリキュラムを生み出していく姿勢が保育士に求められます。子どもたちがどう動くかを予め考えておく準備と、実際に起きる予想外のできごとなどに対応して、カリキュラムを創発していきます。別名は緊急カリキュラムや創発的カリキュラムと呼びます。

9.プロジェクト型保育

プロジェクトは、エマージェントカリキュラムと並んで、実際の保育にダイレクトに関係してくるポイントです。

レッジョ・エミリアの保育士は、何かを為すことによって子どもたちは学びを得る、という信念を強くもっています。これはレッジョアプローチにとって重要なことです。小グループで話し合うことで、さらに学びはより良い方向に成長すると信じています。

エマージェントカリキュラムが一過性の瞬間的なカリキュラムであるのに対して、いったんプロジェクトとして成立した活動は、数ヶ月間に渡ってじっくりゆっくりコトコトと進行されます。

保育士は、プロジェクトの立案時に子どもたちがどのような学びを経験するか、そのためにどんな質問や材料が有効かを事前に考えて準備しておくことが推奨されています。

下記にプロジェクトの予想と結果を示した図を掲載しておきます。

出典:Adapted from Amusement Park for the Birds. by L. Gandini. 1993, unpublished manuscript.

10.展示会

レッジョエミリアアプローチでは「子どもの百のことば」という展示会が開かれてきました。子どもたちのアートやドキュメンテーションが展示され、多くの人にレッジョアプローチを知ってもらうきっかけとなりました。

まとめ

駆け足でレッジョエミリアアプローチを見てきました。レッジョエミリアはメソッドのような確固たるカリキュラムの集合でも目に見える教具が存在するわけでもないので、大変簡単に誤解されてしまいます。

今後も随時記事をアップデートしていきたいと思います。