この本に期待していいこと
レッジョエミリア・アプローチの理想像が分かる
レッジョ・アプローチは一体何が素晴らしいのか、どういう点が優れているのかを知ることができます。
理想的なクラス運営の描写は、たしかに実際の事例なんであろうなという瑞々しいものです。
事例紹介の中で使われる言葉や文章表現も、子供らしさを残したまま文章としての分かりやすさを兼ね備えた、優れたものなので、レッジョエミリア教育のゴールを知りたい、と思っている方には良書です。
事例が日本人の子ども
また事例がイタリアのものではなく、日本のスクールのものであるという点もありがたいです。
登場する子供たちはおそらく年少から年長の園児たちです。
レッジョエミリア・アプローチによる日本に住む子どもたちの実例という点でも、理想的なレッジョのお手本を知りたいという方には大いに参考になると思います。
この本に期待すべきではないこと
一方で、
- レッジョエミリア・アプローチを園に導入するために、体系的で手順立てた詳説や研修方法を求めている
- モンテッソーリなどの他メソッドとの違いを学術的に・科学的に解説してほしい
- 具体的なスキルや、その実践方法を知りたい
という期待をもってこの本を手にとることは、あまりおすすめできません。
たしかに、どんな教室を作るべきか、どんな環境が用意すべきか、どんな挑発を行ったか、という具体的な情報もありますが、それはあくまでレッジョエミリア・アプローチのイメージを掴むために書かれているのであり、園への導入プランを検討するとか、学問としてのレッジョエミリア教育とは何かを知るために書かれたものではないと、感じます。
役立つAmazonレビュー
(前略)著者の独特の言い回しが確かに少し読みにくい(回りくどいというか)ですが、保護者として毎日幼稚園でどのようなことが行われているのか、どういう視点で先生方が子どもたちを見守ってくれているのか、どんな意図があって幼稚園での毎日を過ごしているのか、などなどレッジョエミリアアプローチのことは良く理解することができました。(後略)
先生の視点が分かるということは、どういう視点で保育を行っていくかという目安が分かるということなので、有益ですね。文章はちょっと苦手だったようですが…(笑)
(前略)親が準備できる・出来ないがあると思うので、全部読んで、取り入れられるところを取り入れることをオススメします!(後略)
こちらの方も親として読まれた模様。ただ「取り入れるところを取り入れる」という考え方はレッジョアプローチの特徴的な表現でもあるので、引用させていただきました。
(前略)この本よりも倉橋惣三の著書の方が確実に参考になります。
痛烈な批判を、この一文で締めくくっています。倉橋惣三(そうぞう)さんとは明治時代の児童心理学者です。「誘導保育論」を提唱なさった高名な方。園に配置する遊具や環境を整えることで園児の遊びに刺激を与えて、自発性を伸ばしていくといった考えを始め、多くの点からレッジョ・エミリア・アプローチとの親和性が高いと言えます。
今回紹介したような入門編の本を経て、もっと知りたい、関連知識も知りたいと思われた方には、倉橋惣三さんの残された著書も面白いかもしれません。
著者のアレッサンドラ先生について
まとめ
「レッジョエミリア保育って最近たまに聞くけど、一体何なの?」「具体的にどんなことをするのか事例を知りたい!」というニーズには十分応えてくれる、入門レベルから初中級レベルまでの方には、高い品質の実例を知ることができる良書です。
(ちなみに私は本に出てくる「カメの名前」のくだりで吹き出すほど笑いました。子どもは本当にファンタジーです。)